2017-03

リレー16

※時期的なキリがいいので、次回を最終回にしたいと思います。


前回まではこちら


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―で、どうやって決めるん…つもりだよ?

―どうやってでも構わないさ。

―強気なんだな。

―ああ。なんだったら弓道でも構わない。

―あ?…なめてんの?それかふざけてんの?

―失礼。例が悪かった。けど、なんでもいいんだよ。お互い的にいくら当てたって仕方がないんだ。そこに勝ち負けがないんだから、決め方も決めてもらい方も、なんでもいい。

―じゃあなんでここに来たんだよ。美咲がどっちかを選ぶまで、お互い待てばいいじゃん。

―電話で言ったろ?負けるのが怖いんだよ。待つぐらいだったら、弓で勝負する。そうしたら、前園さんは僕を選ぶかもしれない。挑発にのって、君はここに来た。一つ僕の方に流れが向いてきたと思ったよ。どんなにせこくても卑しくてもいい。もう一息で、僕が彼女のために動くすべてのことに意味ができる。僕が求めているのは、それだけだよ。

―本の読みすぎだよ、先輩。そんなのよそでやってくれよ。せこいとか卑しいとか、先輩に似合わねーっすよ。…どこ見てるんすか?

―…いや、せこいのはむしろ君だろう?

―なんで?

―ノコノコやってきて、僕の話だけ聞き出して、傍観者気取りなのが気に食わないね。

―…どういう意味だよ。

―ちっとは頭を使えっていってるんだよ。こんなところに俺の話だけ聞きに来たんじゃないだろ?お前が言ったんだろ?「決めに」来たんだ。俺はお前の口からなんにも聞いていない。そんな情けないやつに、前園さんはなおさら渡せねえよ。


--先輩の言う通りじゃないのか?

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じっとりとした砂煙が、燻るように上がってくる。

静かな、6月の景色のはずなのに、赤紫に花をつけたスミレが、足元に絡みつきそうなほど気だるい。

真人と美咲は、濡れた遊歩道の路面に傘先をつけて立っていた。色の控えめなサマーシャツの中にカジュアルなインナーのプリント。どう見ても、丁寧にコーディネートした感じじゃない。

「美咲はさっきまでカンカンに怒ってたよ。どっちも勝手だってな。なんで私のことばっかり考えるんだって。なんで自分の思う幸せを私に押し付けるんだって。」

美咲は下を向いているけど、否定する様子もない。

「けど、俺の勝手な予想だけどな。美咲はもう高野さんに怒っちゃいないよ。勝手でも自己中でも、思いの丈を全部持って先輩はここに来たんだ。そんな人を否定するように、美咲は、女の人はできちゃいないよ。俺も美咲も高野さんも、許せないのはお前だけだ。」

胸の内から何かが突き上げた。背中が震える感覚を、生まれて初めて味わった。

その瞬間、真人は俺に向かって一直線に走ってきた。俺の胸ぐらをつかむまで、一瞬の迷いもなかった。

「美咲がどちらかを選ぶまで待つ?お前、どこまでボケてんだよ。その間中、美咲がどんな思いでいるんだよ。美咲が苦しい時間を、なんでわざわざお前の勝手な都合で作るんだよ。だからスカタンだって言ってんだよ!いいか?俺たちが海に行ったあの瞬間から、美咲の悩みは始まってるんだ!俺たちがこれからどうするかぐらい、帰りの電車でとっくに気づいてる。俺たちはこの結末に向かって動いていくしかないじゃねえか。なんでそれがわからない?高野さんも美咲も、全てを受け入れて動いてるんだ!高野さんは…」

ふっとつかんだ指が緩んで、真人は歯ぎしりをして俺を押しのけた。

「ここに負けに来たんだよ。諦めに来たんだ。そしたら、お互い待てばいいなんてクソみたいなことを言いやがる。そりゃ怒るさ。皆怒ってる。わかってないのは、おまえだけだ。」


奥歯がきしきし揺れて、脳に振動が伝わる。涙腺というのが人体にあるんなら、その期間を刺激するためにあるような振動だった。

いやな沈黙が流れるはずの雰囲気を破ってくれたのは、やっぱり高野さんの優しさだった。


「桜庭君。悪かったよ。弓で勝負するなんて言ったのは、完全に僕の失言だ。本当に申し訳ない」
「けど、それでも言わせてもらうよ。君がこのまま沈黙を続けるなら、今すぐに君のご実家に行って、弓で勝負してもいい。そして、前園さんに約束をとりつける。」


雲間から日光が見えた。光の梯子が下りて、俺の頭を差した。
この光りが、4人の道筋になる。そのためには、俺が動かなくちゃいけない。



「俺、高野さんを心の底から尊敬します。けど…」


俺は振り向いた。高野さんに言うセリフを、美咲の方に向かっていった。せこい方法だけど、尊敬する先輩とツレの前で、照れ隠しなしではこれが精一杯だ。


「俺は美咲が好きです。美咲のことも、家のことも、俺がずっと寄り添ってやりたい。高校生のガキじゃ説得力がないかもしれませんけど、心だけは高野さんにも真人にも負けたくない。なんていうと誰かに言わされてるみたいだけど…」

真人が俺を小突いた。
―前置きが長いんだよ。
顔はいかついけど、体全体で笑っている。いつもの頼りになる真人だ。

「自分の言葉と態度で、美咲を迎えに来ます。絶対に。」


美咲を見ることができない自分の甘さをフォローするように、高野さんは俺に手を差し出してくれた。
小指の中央と親指の付け根に、普通の生活では考えられないようなタコができていた。

―君のことが知りたくってね。


こんな人に、いつかなってみたい。


固い握手だった。
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泣きゲー



雑記2回目はわたし、逆志乃機里が担当します。

第1前提としてふだんの私はオタク前回なので本記事もそういう成分がたぶんに含まれる可能いが高いということはご了承くださいww

それではゆるく行きましょう。

私がオタク文化に傾倒するきっかけになったのは、美少女恋愛アドベンチャーゲーム。いわゆるギャルゲーと言われるものに触れたのがきっかけです。

懐かしのWindows95を父から譲り受けた私は、ソリテイアやマインイーパーで遊んでいたんですが、それにもすぐ飽きて、友達にPCでも遊べるゲームってないの? と聞いた後、かしてくれたことがきっかけでした。

多分ここで一番はじめに借りたゲームが違っていたら、私はこの世界に傾倒することはなかったと思います。

その一番はじめに借りたゲームが泣きゲーの代表作。
ブランド、keyの『kanon』でした。

ゲームで泣いたのはこれがはじめてで、本当に感動したものです。
ゲームはパズルが解けた時の興奮や、RPGの熱い展開に興奮。基本的にキタコレ!と興奮するもののイメージが強かった私に、いい意味で概念を潰してくれるものでした。

これが、萌え要素やエロ要素もりもりのギャルゲを一番はじめにプレイしてしまっていたら、すっと離れていってしまっていたと思います。

実質、『kanon』を文学的な目線で見ると拙いのが正直なところ。文章もそんなによくなかったです。でも、ストーリーと映像と音楽が牽引する力で引き込まれました。

序盤の日常シーンではゆるい萌えアニメ的なものを延々と見せつけられるんですが、その後各ヒロインとのシナリオに入ると、それぞれの内に秘めた切なるものと対峙していくことになります。それはそれは王道のセカチュー的な話からゴースト的な話まで多種多様なんですが

その切なるものに打ち勝つところで感動的なBGMがかかってくる。
泣かずにはいられません。
前半との対比もありますし余計に感動が迫ってきます。

と、こんなところでしょうか。
あんまり深くまで話すとオタクオタクしてきますしねww

そうそう、最近では、アドベンチャーゲームの王様「かまいたちの夜」が萌え絵になってリメイクされたそうで、ちょっと気になる。ピンクのしおりとか色々あって面白かったですよねー。



リレー15


前回まではこちら





 夏はもうすぐだった。しとしとと湿気ばかりを含んだ弱い雨が昨晩から降り続いていた。
 家を出ることがなんだか億劫な気もした。けれど、行かないわけには行かなかった。不戦勝なんて選択をするなら、高野先輩にあんな事は言えない。
 あれから一週間猶予があった。俺は、自分の気持ちのどこに焦点を当てていいのかわからなかった。バカみたいにちっぽけな男どもが雁首そろえて何をすればいいのかもわからなかった。どこが決着なのかがさっぱり見えなかった。
 けれど、それでいいのかもしれない。高校生や大学生のガキの俺たちが何かを変えようなんてそれこそ甘ったれているのかもしれない。だったら、美咲にも言った通り、馬鹿な俺は目の前にあることを一つひとつ解決していくだけだ。






「おい、何言ってんだよ」

「ちょっと遅れるって言ってるだけだろ、野暮用ができたんだよ。それにな、もう諦めたっつたろ、だから本来俺の出る幕じゃないんだよ。だからちょっとくらい遅れたって一緒だ」

 言うが早いか真人はLINEの通話を切断した。
 危うくスマートフォンを壁に投げつけそうになった。
 真人が何を考えているのかわからなかった。いや、わかろうとしていなかったのかもしれない。もしも立場が逆だったなら、俺は普通に何食わぬ顔で集まることができただろうか、虚勢であろうと何であろうと終わりにした筈のものともう一度対峙することができるだろうか。

 やってられなかった。






 集合場所は美咲の家の近く公園だった。知らない町の知らない公園。
 以前は真人と二人だったからか、東京までの道のりはとても遠く感じた。雨が車窓を濡らし、自分のいる場所を曖昧にした。



 公園に着く頃に雨はあっさりと止んだ。相変わらず鬱々とした湿気は辺りを取り巻いている。そんな憂いを帯びた空間に、高野先輩はたたずんでいた。絵になると思ってしまった自分が憎かった。

「やあ、早かったね」

 遠くから高野先輩は俺に言った。

「お久しぶりです」

「今日は敬語はいいよ。こんな時に先輩も後輩もない。ただの一人でいいじゃないか」

「じゃあ、お言葉に甘えます」

 その性格が嫌いだった。勝手に敵対視して、馬鹿みたいに優秀で、俺にないものをたくさん持ったこの人が。相手のお膳立てだとしてもやっと対等のステージに立てたのだと思うと、少し気は紛れた。

「真人は来ない。先輩、これから何をするんだ。こんなところに集まったって何をできやしない」

 小さな沈黙があったような気がした。

「決着をつけたいんだ僕は。僕が決めるようなことではないと思っているけれど、君が前園くんに相応しいかどうかを見極めたい。もし、どうしようもなく、僕の入る隙間のないほどに相応しいのであれば、諦めることができるかもしれない。ただ、そうでなかったら、
僕は今度こそ全身全霊を持って、前園くんの人生を僕のものにするよ」

 唾を一つ飲むことさえ辛かった。先輩の決意は本物だった。自分の矮小さが明確になる気がした。ハリボテになってしまいそうな心をなんとか支えて立ち止まる。

「望むところです」

「わかった。では……」

 そこまで言って先輩は口ごもった。目線がいつの間にか宙に浮いて、その後俺の後ろを注視している。その視線がどうしても気になって、俺も後ろを振り向いた。
 



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Author:逆志乃 機里
逆志乃機里、タンパクが各々好き勝手に織り成す、それなり小説集。
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